【お内仏はあるけれど】
 東京のとある住職に聞いた話です。その住職があるアパートに盆参りに行かれた。その家は家庭事情から、お内仏(ないぶつ)がテレビの上に乗っていたそうです。それはそれで仕方のないこと。全く問題ありません。その住職が、「お参りを始めるからテレビを消していただけませんか」と言ったところ、その家の人は「今、テレビを消せないんだ。御住職、悪いけど一人で拝んでくれるか」と。
 盆参りの時期は高校野球の真っ最中。その時やっていた試合が接戦で、どうしても見逃したくなかったんだって。
 仕方ないからその住職さんは、そのままお参りをした。そこに居る人はみんな同じ方向を見ている。つまりご住職は上のお内仏を拝んでおられるけれど、家人は下のテレビを観ているという、奇怪な風景がそこにあったそうです。
 これは極端な話ですよね。でもお内仏は家にある。でもお参りしたことなんてない、、、という人、けっこう多いんじゃないですか?。


【お内仏のある風景】
   真宗大谷派では「仏壇」を「お内仏(おないぶつ)」といいます。正確には仏壇という言葉も使いますが、それはあくまでも壇全体を指し、私たちは崇敬しお給仕する部分は「お内仏」です。
 浄土真宗は他宗派とは比べものにならないほど、早くから家庭にお内仏がありました。それは蓮如(れんにょ)上人の時代ですから、500年以上の歴史があるわけです。
 その時代のお内仏は、床の間に「南無阿弥陀仏」の軸を掛け、台を置き燭台と花瓶と香炉をお飾りする質素なものでした。当時の人は、お勤めや法座があるたびに、床の間にそういった荘厳をしたわけです。蓮如上人の言葉に「本尊は掛けやぶれ、聖教は読みやぶれ」と言われます。大事なものだからとしまっておくな、お勤めをせよ、仏法を聞け、と言われているのです。
 それが現在の固定式箱形仏壇となったのは江戸中期と言われます。
 こういった意味で言えば、現在の住宅事情で大きい仏壇が購入できなくても、三つ折り本尊・燭台・花瓶・香炉さえあれば、そこは「お内仏」なのです。
 古来、我々の先達は質素なお内仏を尊び、そのお内仏から人生を学んできたといってもいい。現在はどの家庭でも華美な仏壇があるけれども、私たちは先達ほどお内仏から何かを学んでいるでしょうか?。坊さんが来てお参りを始めたのに、お内仏の前にいるのに、お内仏を拝んでないなんてことはないでしょうか?。


【お内仏って何?】
 ところで、このお内仏とは何なんでしょうか?。
 例えばですよ、「うちは先祖がないからお内仏はいらんのや」と言われる方がいるけれども、それは正しいのでしょうか?。
 「お経」というものがありますよね。八万四千あると言われます。これはお釈迦さまの説法を書き写したもの、またはお釈迦さまの本当の言いたかった精神を書き写したものです。その中で私たち真宗門徒(もんと)は「浄土三部経」という三つのお経を拠り所としています。そのお経は、阿弥陀仏の浄土の有り様、はたらきを言葉で表現しているのです。
 そして、この「お内仏」は阿弥陀仏の浄土を形で表現したものなのです。
 お内仏は御先祖様の霊を安置する壇ではありません。もちろん私たちに先立って浄土に還られた方の法名を書きお飾りはします。しかし中心はあくまでも、浄土を浄土たらしめる御本尊・阿弥陀如来なのです。
 お内仏の本当の意味に帰れば、「うち先祖がないのでお内仏はいらない」という理屈は成り立ちようがないでしょう?。真宗門徒を名告る者の家には必ずお内仏があって、そこを家庭の中心としているのです。


【給仕は仏の手伝い】
 お内仏は浄土という世界を形として表現したと書きました。
 形として表現された浄土=お内仏は、その仏具一つひとつが浄土・如来のはたらきを表現しているものと言えます。
 例えば花瓶に飾られた花。これは仏に捧げるために飾るのではありません。もしそうならば、仏の方に向けて飾るべきでしょう?。花をこちらに向けるのは、花を通して何かを学びなさいという、仏の教えなのです。
 浄土真宗で飾る花は生花と決まっているのですが、生花はどんなに美しく咲いても必ず枯れます。死すべき生を生きていながら、その事実に対し無頓着な私たちに、花は諸行無常の道理を教えているのです。
 華瓶(けびょう)というものには水をお飾りします。水は形の違う入れ物に入れれば形は変わる。しかし水というものの本質が変わるものではないでしょう?。仏のはたらきも、どんな状況を生きる人にも変わらず柔軟にはたらきかけてくださいます。
 お香はそこに居るものに差別なく行きわたります。仏のはたらきも差別はない、老少善悪の人をえらばず・きらわず・みすてず行きわたるのです。
 御本尊・阿弥陀如来絵像も形でそのはたらきを表しています。阿弥陀仏の後光は48本ある。阿弥陀仏は立っておられる。阿弥陀仏は薄目を開けておられる。木像の阿弥陀仏は垂直ではなく前屈みになっておられる。つまり、苦悩する私たちがいるかぎり、座っておられん、黙想しておられん、いつでも私たちに向かって、48の本願をもって救い摂ろうとしてくださっている。そのはたらきを形で表しているのです。
 お内仏の給仕は、仏に対して私たちが何かをしてあげているという質のものではありません。私たちが仏のお手伝いをしているのです。お内仏の給仕をする時、「供える」ではなく「備える」という言葉を使いますが、これは本来あるべき所にある仏具を「備える」という意味なのです。


【お内仏の荘厳】
   お内仏は正しく≠ィ飾り(これを荘厳(しょうごん)といいます)してください。
 正しいとは、一つには教えにかなうこと。経文に説かれ、高僧達が伝え、親鸞(しんらん)聖人が顕かにされた浄土のすがたを表していることを忘れずに。また、真宗大谷派の荘厳をすること。大谷派の先達が、何年もかけて作ってくださった形です。その歴史を尊ぶようにしてください。
 お内仏の形として問題になる部分もないことはありません。しかし、よく考えもせず、自分を思いをお内仏の中に入れるのはよくないのではないかと思います。
 お内仏の荘厳と仏具の位置について別頁で詳しく説明しています。これに使った図は「真宗大谷派研修部」の資料を無断で(すいません)転載しました。
 もう少し詳しく荘厳の仕方を見てみましょう。

香炉は三本足の場合、一本が前にくるように荘厳する。(図は火舎香炉。土香炉の場合も同じ)
花瓶(かひん)・鶴亀(つるかめ/燭台)・香炉(本来は金属製の香炉)で三具足という。これが御本尊前の荘厳の基本。花瓶は図のように、袴の部分が前にくるように荘厳する。
鶴がくわえている軸を「蓮軸(れんじく)」という。これは蓮の実・葉・蕾。
蓮の実が正面、蓮の葉が外側、蓮の蕾が内側となる。
なお蝋燭に火を点ける時、蝋燭を鶴亀にさしたままライターやマッチで点けるのではなく、蓮軸を外し火を点ける方が丁寧。蓮軸が外れ難い場合は、蝋燭だけ外し、火を点けてから戻す。
香炉に線香を焚く時、立てずに、適当な長さに折って(折り方に決まりなし)寝かす。
仏供(ぶく/仏飯)は図のような形にする。これは「蓮華の実」を米で形どったもの。朝のお勤めの後でお備えし正午にお控えする。
仏供を作るための仏具を盛槽(もっそう)という。家庭用の盛槽は仏具屋などで安く購入できる。
位牌は用いない。法名軸を用いる。法名軸はお内仏の横にピンなどでつける。縁ある故人を個別に書いたものと、家の御先祖の法名を全部書いたものがある。

(岡崎教務所『蓮如─あなかしこの世界』より)
仏間は全体としてはこうなる。遺影はお内仏の真上でなく横の欄間に。御供物はお内仏の中ではなく外に。神社・仏閣のお札などはお内仏に入れない。仏事の時など、床の間の掛け軸は「南無阿弥陀仏」の六字名号ではなく仏語などをを掛ける。

(岡崎教務所『蓮如─あなかしこの世界』より)
上図とこれを比較して、何がおかしいのでしょうか?
考えてみてください。

蝋燭の色…大谷派で使う蝋燭は3種類です。赤・金・銀。白は基本的に使いません。祥月命日・年忌・季節の仏事・報恩講など全て「朱蝋(赤色)」、葬儀・中陰は「銀溜(銀色)」、結婚式は「金溜(金色)」が基本です。ご家庭に白しかない場合はそれで結構です。
打敷…前卓に荘厳する打敷(うちしき)は平生は掛けっぱなしにしません。祥月命日参り、年忌、報恩講などの時に掛けます。中陰中は白色(淡い色)の打敷を掛けます。

お内仏の形は家によって違うので
この通りできない場合もあります。
色々堅いことを書きましたが、
分からないことがあれば住職にお気軽に
お聞きください





□□□ 滋賀県草津市で信用できる仏壇店 □□□

最近の仏壇屋は「とにかく売ればいい」という発想で、購入者が真宗大谷派を名告っているのに「仏具として必要のないもの」「真宗大谷派以外の仏具」を売りつけたりすることが多々あります。また、外見であるとか現代的な感覚を大事にすることだけにとらわれ、一番大事な御本尊(ごほんぞん)≠添え物のように売る仏壇屋があります。基本的な知識が不足している者が販売員として店頭にいることもあります。また、例えば蝋燭の真上に瓔珞を吊る、など後々のことを考えず、とにかく仏具を配置すればいいという仏壇販売員もいます。
下にあげましたのは良覺寺住職の主観でみる「滋賀県草津市において信用のできる仏壇店」です。信用のできる≠フ根拠は、
「@真宗大谷派の仏具荘厳の知識がある」
「A他宗派の仏具を売らない」
「B購入者の境遇や状況に鑑みた仏壇販売のアドバイスをする」
「C日々の勤行やお給仕のことを考え、販売する仏具の大きさや配置をよく考えている」
「D商品に間違いがない」
ということです。滋賀県草津市の在住の方(殊に真宗大谷派の方)は参考にしてください。

蛇足ながら、仏壇(お内仏)を購入されるとき、住職に相談されるのが一番よい方法であると思います。
若林佛具製作所近江草津店 住所:滋賀県草津市野村1-3-10
電話番号:077-564-1011 FAX番号:077-564-1013
ホームページ:http://www.wakabayashi.co.jp/
中村仏具店 住所:滋賀県草津市野村5-5-6
電話番号:077-563-9454






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